緑内障とは
緑内障とは、光を感じ取って脳に伝える網膜の視神経が障害され、障害された部分の視野が欠けてしまうという病気です。2000年から2001年に岐阜県多治見市で行われた調査の結果から、40歳以上の約5%が緑内障であることがわかっています。年齢とともに緑内障の割合は増加して、70歳台では10%にのぼります。日本における中途失明原因の第1位となっている、非常に注意すべき目の病気です。
房水の流れ
目の中には房水という透明な液体が循環しています。房水は毛様体で作られて、瞳孔を通り、隅角という場所から線維柱帯(せんいちゅうたい)という網目構造を通って眼球の外へ流れていきます。
緑内障は隅角が広いか狭いかで2種類に分けられます。一つは、開放隅角緑内障であり、隅角が広く開いています。日本に多い正常眼圧緑内障もこのタイプです。一方、閉塞隅角緑内障では隅角が狭く房水が流れにくいことで眼圧が高くなっています。
開放隅角緑内障
閉塞隅角緑内障
眼圧が高いことで緑内障が起こりやすいことがわかっています。ただし、眼圧が正常範囲におさまっていても緑内障を発症する、正常眼圧緑内障というものがあり、日本ではこのタイプがよくみられます。正常眼圧緑内障は眼圧検査では異常がなく、発症しても初期には症状に気づかないため発見が遅れ、知らないうちに症状が進んでいることがあります。
また、ぶどう膜炎などの眼の病気や、外傷、薬剤(ステロイド等)などが原因で引き起こされる続発緑内障や、先天的な要因で引き起こされる先天緑内障などもあります。
緑内障の症状
緑内障の多くは、長い時間をかけて少しずつ進行するため、初期には症状に気づきにくく、未発見のまま放置されていることが少なくありません。
初期には、視野の一部に見えない箇所(視野欠損)がありますが、範囲が狭いので自然に脳が補ったり、反対の目の視野でカバーされたりして、見えていないことに気づきません。
その後、病気の進行にともない視野欠損の範囲が広がり、かすみを自覚しはじめます。この段階になっても気づかないことがよくあります。
さらに進行すると、視野が狭くなり、視野欠損が中心近くにおよんで見えないところが増えてきます。見たいものが欠けてしまったり、ものを見落とすことが出てきたりします。
以下のような症状がある場合、緑内障の疑いがありますので、お早めの検査をお勧めします
- 目がかすむ
- テレビを見ていると、見えづらい部分がある
- 文字の一部が欠けて見える
- 最近、視野が狭くなったような気がする など
※このほか、健康診断で眼圧が高いと指摘された、眼底写真で視神経の異常など緑内障の疑いを指摘されたという場合も、お早めにご相談ください。
緑内障の検査
緑内障の検査には、視力検査、細隙灯顕微鏡検査、眼圧検査、隅角検査、眼底検査、OCT(光干渉断層計)検査、視野検査などがあります。緑内障の多くを占める正常眼圧緑内障は、眼圧が正常なので、眼圧だけでは緑内障かどうかはわかりません。
眼底検査
緑内障の診断のためには、眼底検査で視神経の状態を観察します。網膜の視神経のすべてが集まり視神経乳頭を形成します。視神経は視神経乳頭から束になり脳へ通じています。視神経が少なくなり緑内障になると、視神経乳頭の凹みが大きくなったり、網膜の視神経の層の厚みが薄くなります。眼底検査では、視神経の色や形の変化、網膜の色の変化などを調べます。
OCT(光干渉断層計)
OCT(光干渉断層計)検査とは、近赤外光を利用して眼底三次元画像を撮影して行う検査です。網膜や視神経の厚みを測定することで、視神経のダメージを評価します。視野に異常がでていないごく早期の緑内障も発見可能である、非常に鋭敏な検査です。発見だけでなく、治療効果の判定にも使用します。
緑内障のOCT画像
視神経が障害されている部分(視神経線維層欠損)がピンク色で表されており、下方の視神経が障害されていることがわかります。
正常な視神経のOCT画像
すべて正常を表す緑色で表示されています。
視野検査とは
ハンフリー自動視野計
カールツァイス社
緑内障の発見や治療効果の判定のために視野検査を行います。視野検査はどれだけ広い範囲が見えているかを検査するものではなく、あらかじめ決められた範囲の中の見え方(感度)を調べます。
軽度の視野欠損があっても、脳が補うことにより、見えていると錯覚してしまうため、自覚できません。視野検査を行うことによって小さな変化を見つけることができます。
視野検査では、機械の前に座って片目ずつ検査を行います。様々な場所で光が点灯しますので、光が見えたらボタンを押します。光には強弱があり、それぞれの場所の感度を測ります。視野検査の範囲は、30度、24度、10度があり、病状によって選んで行います。
視野検査結果例 右眼
上方に高度な視野欠損が認められます
OCTによる視神経の検査で、下方に視神経線維層欠損が認められており、それに対応して上方に視野欠損が起こってます。
緑内障の治療
緑内障はタイプによって治療法が異なります。
閉塞隅角緑内障は、基本的にレーザーや手術で治療することが多いのに対して、開放隅角緑内障は眼圧を下げるために点眼薬から治療を開始します。以下では、おもに開放隅角緑内障の治療について説明します。
点眼薬
眼圧とは眼球内の圧力のことで、房水の循環で保たれています。点眼薬は房水の産生を抑える、あるいは房水の流れを改善する等の作用で眼圧を下げます。通常、1種類の点眼薬から始めて、経過によって点眼薬を変更したり、追加したりします。2滴以上点眼しても外にあふれてしまうだけなので、1滴で十分です。
レーザー治療 手術
点眼薬で眼圧が十分下がらなかったり、視野欠損が進行してしまう場合には、レーザー治療や手術を検討します。レーザー治療は、隅角にある線維柱帯という房水の流れ道にレーザーを当てて、房水の流れの改善を図ります。手術は、目詰まりをおこした線維柱帯を部分的に取り除いたり、眼球の一部を切除、あるいは器具を挿入することで房水を眼球の外へ導く通路を作成して、眼圧を下げます。レーザー治療や手術によって眼圧が下がっても、いったん失われた視野が戻るわけではありません。また、効果がしだいに薄れて再び眼圧が上がることもあります。
緑内障は完治する病気ではなく、治療により進行を遅らせることで、一生困ることなく生活を送ることができるようにするのが目的です。そのため、治療を中断することなく、生涯通院することになります。定期的な検査と治療を継続するために、自分の病気のことをよく理解して、あせらずじっくり治療に取り組むことが大切です。