自分の意思に関係なく、まぶたがピクピクとする経験をもつ人は少なくありません。多くの場合、眼瞼ミオキミアと呼ばれるもので、眼輪筋という目のまわりの筋肉が自然に動いてしまう状態です。健康な方でも眼精疲労やストレス、睡眠不足などがきっかけとなって起こることがあり、数日から数週間で自然に治まることがほとんどです。

ただし、まぶしさを感じて目が開けにくくなったり、長期間症状が続いていつまでも治らなかったりする場合には、「眼瞼けいれん」や「片側顔面けいれん」という注意すべき病気のことがあります。

眼瞼けいれん

眼瞼けいれんイメージ画像

眼瞼けいれんは、自分の意思とは関係なく両眼周囲の筋肉の緊張が起こり、進行すると目が開けづらくなるなどの症状が現れるものです。
眼瞼けいれんの原因はまぶたや目にあるのではなく、脳から送られてくる、まぶたの開閉に関する信号が上手く伝わらずに起こると考えられています。眼球や視力に障害が起こることはありませんが、目が開けにくくなることから日常生活や仕事に支障をきたすようになり、一人で歩けないといった状態になる場合もあります。

ただし、目が開けにくくなるなどの強い症状はかなり進行した場合に起こる症状であり、初期には、目が乾く、目を開いているのがつらいなど、ドライアイと似た症状がみられます。
眼瞼けいれんは、50~70歳代に多くみられ、その7割が女性です。

眼瞼けいれんの主な症状

  • 光がまぶしい
  • 目を開けているのがつらい(目を閉じていたい)
  • 目が乾く、しょぼしょぼするなどいつも目のことが気になる
  • 目が自然に閉じてしまう
  • まばたきが多い

これらの症状があれば、眼瞼けいれんが疑われます。
診察では、症状を詳しくお聞きしたうえでまぶたや眼球の状態を観察、まばたきのスムーズさを調べる瞬目テストなどを行い診断します。眼瞼けいれんは自然に治るものではなく、ゆっくりと進行するので、十分に相談して治療を行うことをおすすめします。

眼瞼けいれんの治療

眼瞼けいれんを完治させる根本的な治療はありません。そのため、症状を軽減させる対症療法を行います。当院ではボツリヌス療法を行っています。ボツリヌストキシンを成分とする薬をまぶたの皮下に注射することで、筋肉の緊張を和らげ症状を改善します。

片側顔面けいれん

片側顔面けいれんイメージ画像

片側顔面けいれんは、顔の片側の筋肉が自分の意思とは関係なく、ピクピクとけいれんする病気です。最初は下まぶたのけいれんから始まることが多く、その後上まぶたにもけいれんが起こり、けいれん時には目が細くなってしまいます。進行するとほおや口の周りに広がって筋肉がひきつります。
けいれんは、はじめは緊張した時などにみられる程度ですが、次第に頻度が増したり長くなったりし、日常的に起こるようになってしまうこともあります。通常は片側のみに現れますが、ごくまれに両側に起こることもあります。

顔の筋肉を動かす顔面神経が脳の血管と接触することで圧迫されることが原因と考えられています。

片側顔面けいれんの治療

根本的な治療としては、顔面神経と脳の血管の接触を解消する脳神経外科手術になります。症状を緩和させる対症療法としては、ボツリヌス療法が行われます。ほかに薬物治療としては神経の興奮を抑える目的で、精神安定剤や抗てんかん薬を内服するというものもあります。

ボツリヌス療法について

眼瞼けいれんや片側顔面けいれんの症状を緩和する治療として有効なのがボツリヌス療法です。ボツリヌス菌が産生するボツリヌストキシンを成分とするボトックス®を注射することにより、神経と筋肉の間で刺激が伝わるのを阻害して、筋肉のけいれんや緊張を抑える効果が得られます。

ボツリヌス療法の流れとしては、まず注射の痛みを軽減する目的で、注射部位を保冷剤で冷やす、あるいは表面麻酔薬を塗るなどの前処置をします。次に患部の皮下に薬剤を注射します。眼瞼けいれんでは両側合わせて12ヵ所程度、片側顔面けいれんでは片側4~7ヵ所程度に注射をします。所要時間としては5分程度です。

注射後、2、3日から2週間で効果が現れます。効果が持続する期間は通常3~4ヶ月程度で、次第に効果が薄れていきます。そのため症状が再び現れ始めたら、再度の注射を行います。効果の持続期間については個人差があります。

以下のような副作用が現れる場合があります

  • 皮下出血がみられる場合がありますが、次第に吸収されます。
  • まぶたが閉じにくくなる、あるいは反対にまぶたが下がることがあります。
    目が閉じにくい場合、目の乾燥によって角膜や結膜が傷つくことがあるので、予防のために点眼薬を使用することがあります。
  • ごくまれに、ものが二重に見える複視になる場合があります

これらの副作用のほとんどは、薬の作用が予想以上に強く現れた一時的なもので、薬の効果が薄れるにつれ軽減していきます。注射後の効果、副作用によって、2回目以降の注射部位、投与量を検討します。

ボツリヌス療法 料金

1割負担
約4,000円
2割負担
約8,000円
3割負担
約12,000円

基本診療料(初診料・再診料)、検査費用は含まれていません。