ドライアイとは
ドライアイとは、さまざまな要因により涙液層の安定性が低下(涙の層が不安定になり目の表面を保護する力が低下してしまう)する病気のことであり、不快感や見え方の低下が起こります。以前は、ドライアイと確定診断するためには、涙の異常に加えて、目の表面(角結膜上皮)に障害が認められることが必要でしたが、その後、目の表面に傷などがなくてもドライアイ症状が強い場合が多くあることがわかってきました。そのため現在では、涙の異常があり、ドライアイ症状があれば、ドライアイと確定診断されます。
診察では、検査用の色素を目の表面につけて、涙の量や安定性、角結膜上皮の状態を観察します。
目の表面に傷があると緑色に染まります。角膜に点状の傷(点状表層角膜症)が多く認められており、ドライアイの状態です。
角膜に傷はできていませんが、涙の層が不安定になり、乾いたところが暗く表されています。このように、傷がなくても涙の異常が認められればドライアイと診断されます。
ドライアイの症状は、乾燥感以外に、ゴロゴロする、まぶしい、目が疲れる、目が開きにくいなどさまざまです。
ドライアイの原因には、涙の質が低下して蒸発が早い場合、涙の分泌量が低下している場合などがありますが、いずれにしても、ドライアイでは涙が目の表面に留まりにくくなっている状態になっています。先天的な要因に加えて、スマホやパソコンなどを見続けるVDT作業、コンタクトレンズ装用など環境要因でもドライアイは誘発されます。
また、膠原病などの全身的な病気によってもドライアイが起こることがあります。
ドライアイの治療
点眼治療
ドライアイに対しては、まず点眼治療を行います。涙のかわりになる水分を補給する従来の点眼液に加えて、涙の質に作用して安定性を改善させる点眼液などがあり、症状に応じて使い分けたり、組み合わせたりして治療を行います。ドライアイは点眼して完治する病気ではないため、症状をコントロールするためには、点眼治療を続ける必要があります。
涙点プラグ挿入
涙は涙腺から分泌され、目の表面を潤した後は上下まぶたの内側にある涙点という小さな穴から涙道へ流れ出します。涙の分泌量が低下しているタイプのドライアイに対して、点眼治療で症状が改善しない場合、涙点に涙点プラグという栓を差し込んで、目に溜まる涙の量を増やす治療を行うことがあります。点眼麻酔をして数分で行うことができますが、脱落することもあり、効果には個人差があります。
涙点プラグ
左下まぶたの涙点に涙点プラグを挿入した状態
涙の流れをせき止めて、目に溜まる涙の量を増やします
涙点プラグ挿入術(片目、上下2か所)料金
- 1割負担
- 約1,700円
- 2割負担
- 約3,400円
- 3割負担
- 約5,100円
基本診療料(初診料・再診料)、検査費用は含まれていません
マイボーム腺機能不全とドライアイ
ドライアイ全体の80%以上は、涙の質が低下して蒸発が多くなってしまうタイプといわれています。まぶたの中にあるマイボーム腺という組織が、油を作りまぶたの縁から分泌しています。この油分が、涙に油の層を形成して、涙の蒸発を防ぎ、安定させる重要な働きをしています。油を分泌するマイボーム腺に異常をきたして、涙の質が低下してしまう状態を、マイボーム腺機能不全といい、ドライアイの大きな原因となっています。
マイボーム腺機能不全は、まぶたの縁の状態と、マイボーム腺分泌物の質と量を調べることによって診断します。
マイボーム腺の出口(開口部)が詰まって、
油の分泌が妨げられている状態です
本来は透明な分泌物が、
マイボーム腺の異常によって黄色に濁っています
マイボーム腺機能不全の治療
- ①温罨法(おんあんぽう)
- まぶたの温度を上げて一定時間保つことで、固まってしまった油分を溶かし、血流を改善することにより、マイボーム腺からの分泌量を増やします。市販の温熱アイマスク、蒸しタオルなどを使用します。
- ②眼瞼清拭(がんけんせいしき、リッドハイジーン)
- まぶたの縁にあるマイボーム腺の出口付近を洗浄することで、汚れたり詰まったりした油分を取り除き、細菌を減らすことによって、症状の改善をはかります。お湯や水で洗浄しても効果はありますが、専用の目元専用シャンプーを使うとより効果的です。
- ③点眼治療
- まぶたの縁に細菌が増えて炎症が起きている場合、抗菌点眼液で細菌を減らすことで、症状の改善をはかります。